踏んだり蹴ったり [工具・DIY]
業務で工作をしていると、腕がもう一本ほしくなることがあります。
「誰かこれを押さまえといてくれ~。」というなら話は簡単。
万力などで工作物が動かないように固定してしまえば済みます。
ところが…
「誰かスイッチをタイミング良く押してくれ~。」の場合はどうしましょう。
そういう時に限って、手が空いた社員はいません。
あまつさえ、運良く手助けが来たとしても「で、どんなタイミングで?」
と尋ねられることは必至。それが口頭で説明できたら苦労はしません。
「ハイ!と言ったらスイッチを即座に押せ」では、ちょっと騒々しい。
とある電気システムの通電スイッチは本体ユニットにあり、使うのに苦労していました。もちろん工作物は万力に据えてありますが、両手に持った器具をピンポイントで同時に工作物へ当てがって作業する必要があるのです。そうしないと狙いがハズレてしまい、仕上がりが美しくなりません。場合によっては完全な失敗です。
「最初からスイッチを入れっぱなしにしておけば?」という意見は却下。
自分の手に持っている器具にはユニットから電流が流れており、必要な時だけ通電させないと危険です。
片手でスイッチを押してから、器具を取り上げて工作物へ当てがい、作業が済んだら器具を下ろしてスイッチを一旦切るのが本来のやり方でしょう。けれども、器具の上げ下げ、スイッチを入れたり切ったりするのが実にわずらわしい。工作物の数量が多いときは手順をうっかりまちがえて、スイッチを入れたつもりが入っていなかったり、逆に予期せぬときにスイッチが入ったままで危険な目にあったこともあります。
説明が長くなりましたが、手は2本しかありませんが、まだ足が使える!
フット スイッチがあれば、足でペダルを踏んだときだけ通電させることができて自分のタイミングで作業ができるのではないか?と気が付きました。
限られた時間と、限られた予算、それに限られた知識でフット スイッチを調達することになりました。
まずは素材ですが、我が家でお蔵入りになっていた家電アクセサリーが使えそうです。
見慣れないと思いますが、この器具は「手元スイッチ」とでも言うべきアイテムです。壁のコンセントに差し込んでおき、器具の前面にあるコンセントに使用する家電の電源コードを接続すれば準備完了。すなわち、電源コードとコンセントの間に割り込ませる形になります。
この器具の下部からは長いコードが出ており、コードの先にはスイッチがあります。家電の電源スイッチを入れたままにしておき、あとはこの器具のスイッチで電源のオンとオフを切り替えます。この手元スイッチを身近に置いておけば、いちいち家電本体の電源スイッチを操作しに行かなくてもよい。横着応援アイテムですね。
要は、このアイテムの手元スイッチを足踏みのフット スイッチに交換してやるだけです。
この先は、家電アクセサリーの改造になります。同様の改造をする場合は、「事故は自己責任」「ケガと弁当は自分持ち」ですぞ。
覚悟が決まったら、手元スイッチのコードをちょん切って、カバーを開けてみましょう。
構造は取り立てて説明するまでもありません。
オリジナルの手元スイッチのコードには、こんな形状の端子がついていました。秋葉原の電気部品店では「丸端子」と呼ばれていました。規格は「1.25×3」だそうです。まったく同じ物は調達できませんでした。
小さな部品なので、取付けに失敗した時のことを考えて予備も買いました。
フット スイッチは、用途に合わせて色々な種類がありました。
実は「どんな電気器具と組み合わせて使うか」を調べておく必要があります。
器具の定格アンペア数に見合うものを買いましょう。
アルミ製で薄い緑色に着色されたスイッチは、古めかしい工作機械を連想させるので一昔前のセンスかも知れませんが、大好物です。これは「踏んでいるときだけオンになる」モーメンタリー型というスイッチです。「一度踏んだらオンの状態で固定、もう一度踏むと解除されてオフになる」のはオルタネート型というそうです。
ご覧のように、コードの結線や配線は自分でしなければなりません。
丸端子の筒状の部分に電線を入れ、筒をかしめると線が抜けなくなります。
あとは端子のリング部分にビスを入れて目的の金具へ取り付けるだけ。
…のはずなんですが、ここで意外な落とし穴。
この端子をかしめるには、ペンチではさんだくらいでは不充分です。筒がひしゃげるくらいの力をかけなければなりません。
万力にはさんで、じわじわと締め付けるのが効果的でした。
さて、この写真には大きな間違いがあります。
答えは、配線の色です。
私は「黒はアース線かなにかだろう。壁のコンセントはアースが取れないタイプだから、必要がない」と勝手に解釈して、赤線と白線だけに端子をつけました。
黒線はテキトーにカットして、赤線と白線に触れてショートしないようにしました。
さて、赤と白を配線して実験したところ、ユニットはウンともスンともいいません。配線をまちがえたようです。
気を取り直して、赤線と黒線のペアにして配線したところ、おお!うまくいったか!?
…スイッチを踏まないうちからユニットに通電しているではありませんか。
で、スイッチを踏むと電気が切れると。
これでは、求める機能と真逆です。そもそも、このフット スイッチは「踏んでいる時だけオン」じゃないのか?
正解は、黒線と白線のペアでした。ああ疲れたなあ。
ところで、このフット スイッチは説明書が入っていませんでした。
配線の注意点とかを事前に確認しておきたかったのに。
まさか、これをいじるのは一定の電気知識を有する者だからトリセツなど不要、ということでしょうか。
スイッチの裏をかえすと、電気回路図が描かれている。
回路図の記号の意味が分からなかったので、ネットで調べてようやく理解しました。
黒線の「COM」とは「COMMON」の略で、「共通」の意味。
白線の「NO」とは「Normally Open」の頭文字で、「通常時開放」の意味。
赤線の「NC」とは「Normally Close」の頭文字で、「通常時短絡」の意味。
これを先ほどの回路図と併せて、自分なりに解釈してみました。
先ほど、黒線と赤線をペアにして配線したら、何もしていないのにいきなりユニットが通電状態になったのはなぜか?
①の図は、この配線における「基本状態」を表しています。
黒線と赤線が、スイッチを介して常に通電した状態になっていますね。
②の図は、フット スイッチを踏んだ状態を表しています。
ペダルを踏むと、スイッチが反対側に動くと想像して下さい。結果として黒線と白線がつながれます。
反対に黒線と赤線の連絡が絶たれるので、ペダルを踏んだら通電が切れたのも道理ですね。
また、赤線と白線をペアにして配線するのは全くのナンセンスだということが分かります。いくらペダルを踏んだところで、肝心の黒線に通電しません。
黒線と白線のペアで配線するのが、まさしく私が欲しかった回路です。
この場合、「ペダルを踏むと通電する」という条件に合致します。
初めからこうした回路図を正確に読み取れれば、配線で「あーでもない、こーでもない」を繰り返すことはありませんでした。
何事も予習は大切ですね。
さて、完成したのがこの状態。
さあ、これからはペダルを踏んで、ユニットに言うことをきかせてやりましょう。完全に調べたわけではありませんが、一部の電動工作機械はフット スイッチを取り付けてはいけないそうです。
苦労して組み立てたこのスイッチ。さらに調べると、まさしくこの「コンセント付き」の状態で市販されているモデルがありました。さらに疲労感が増しました。
DIY、おつかれさまです!!
市販で売っていたとしても自分でやるところに意味があります(あるのか?)
最近はこう言った機会に恵まれないのでちょっと羨ましかったりしますw
by Ten (2011-07-01 21:49)
BURUさん、いつもお立ち寄りありがとうございます!
by 馬子 (2011-07-01 22:02)
Tenさん、こんばんは。
会社の上司がこのブログを見ていたら・・・
「市販品があるのに、勤務時間中にムダなことを!」と怒るでしょうね~。
こうした小さなことでも、自分の頭や手を使って体得したことには
意味があると思います。
by 馬子 (2011-07-01 22:13)
馬子様
突然恐縮です.
踏んだときのみONとなる(理想的には)100Vで5A程度流せるfootスイッチのコンセント付モデルを探していて貴殿の頁にたどり着きました.コンセント付モデルの型式などご教示頂けないでしょうか.ずいぶんネットで探しているのですがHitせず馬子様のように自分で作るしかないのかなとあきらめておりました.
よろしければお手数ですが下記メアドにご返信と頂けますと幸甚至極に存じます.
gg5963?gmail.com
(?を@にご変更のうえお使いください.)
五味 拝
by 五味 (2013-03-01 10:13)