修理の鉄則 [工具・DIY]
この連休中、壊れたCDデッキを預かりました。
「CDの出し入れが出来なくなったので、みてほしいんだけど」というわけです。専門家ではないから、直せる保証はないよと言ったのですが…。
まずは、CDデッキって、見た目よりはるかに重いですね。
実は、私はCDデッキというものを買わずに生きてきたのです。
そもそも、パソコンを手に入れるまでは、完全にカセット派でしたから。
試しにコンセントにつないでみて、電源スイッチを入れてみます。
液晶に一瞬、「HOW DO YOU DO?」なんて英語が出ました。粋な演出です。
けれども惜しいかな!アメリカでは「HOW DO YOU DO?」なんて死語ですよ…。
正面からCDを入れようとしても拒否されます。まるで反応がありません。
まずは、鏡面仕上げのカバーを外してみます。
ここまでは簡単で、オーナーもこの状態で写メールを私に送り、助けを求めてきたのでした。
第一印象としては、スキがない構造ですな。
六面全部が基板に覆われている感じです。もっと部品がスカスカの、アナログな家電なら見通しも楽なんですが。
全体をじっくり観察して、フロント パネルを外さないと作業が進まないようです。基板同士の橋渡しをしているリボン ケーブルを傷つけないように剥がしていきます。
ケーブル自体をコネクターから抜いてしまえば楽なのですが、外し方が分かりません。
ようやく、この状態までこぎ着けました。
このデッキは、1階がMD、2階がCDプレイヤーになっています。
不調なのは2階部分なので、この部分だけを外して「身軽にしてから」観察したいものですが…。
ブログの記事用としてではなく、自分のために、段階ごとに写真を撮っておきました。ネジの種類が多いので、どのネジがどこに付いていたかを記録するためです。
小さいくせに、異常なトルクで締まっているネジも多いです。
工具箱からスタビー ドライバー(PB社製:195)を出してきました。
画面左上の、「木の切り株(Stubby)のような、短くて太いハンドルのドライバー」がそれです。
ネジの頭をナメてしまうと往生するので、「このドライバーでは廻せない」と感じたら、早目に工具を切り替えるように心がけています。スタビー ドライバーは、狭い場所で強い力をかけて使えるので、持っていても損はないと思います。
さて、CDプレイヤーだけをなんとか分離できました。
観察して驚いたのは、この部分が強固な構造ではないということです。
プレイヤーは、左右の灰色のダンパー(矢印)と、数本のスプリングで、ハンモックのようにフレームの中に吊られていました。衝撃を吸収するためか何かなのか?全体的に構造が緩いので「こんなのでいいのかな?」という感じです。
正面から、「生けにえ」のCDを挿し入れてみましょう。
すると、あちこちのバネやギアやテコがじわじわと連動し、「CDを受け入れる」動作を開始しました。
ところが、一番奥にあるテコ(矢印)だけが、協調しないといいますか、デタラメな動きをしているのが分かりました。
観察すると、テコの先にピンが植えてあるのですが、そのピンがどこかにはまるのかが分かりません。
「それらしい孔」の候補はいくつかあるのですが、そこへピンを納めてしまうと、カラクリ全体が連動しなくなってしまいます。
オーナーは、
「つい先日までは正常に動いていた」
「振るとカラカラ音がするようではない」
「はずみで内部から部品が出たことはない」
というので、困ってしまいました。
しばらく「あーでもない、こーでもない」を繰り返し、自分ではこれ以上先へ進めないと判断しました。とりあえず元通りに組み立てて、オーナーと相談です。修理においては「それ以上壊さないこと」が鉄則です。ここから先は、自分より腕前が上の方々に任せるしかありません。
余談ですが、スクリュー キャッチ付きスクリュー ドライバー
(PB社製:157-1-120)があると、こうした組み立て作業がはかどります。
スクリューを確実に把持した状態で孔に入れることができるので、うっかりスクリューを落としてしまうことがありません。また、ある程度までスクリューを確実にネジ込めたら、スクリューを把持するツメを開放し、本締めすることが可能です。
家電を分解するときは、矢印がついたスクリュー(図中丸印)を探して外していくとうまくいくようです。それ以外のスクリューをうかつに外してしまうと、部品が本体内部で宙ぶらりんになったり、スクリューが空回りして締められなくなったり。自分には苦い経験があります。
オーナーに、うまく直せなかったことを伝えると、それでも良いと感謝されました。
壊れたデッキは「土に還す」そうです。
元はと言えば、「欠けたCDを突っ込んだら、出なくなったんだよね」
と事もなげに語るオーナー氏。
デッキを近所の畑に生き埋め(不法投棄)しそうな勢いなので、それだけはやめさせなくては!
すみません...オーナーです。
でも、こんなに丁寧に扱ってもらって
大層な延命処置を行なってもらって
更にはこのように記録に残していただいて
私の長年愛したこの物への未練や悔いはもうありません。
お手数をお掛けして申し訳ないという気持ちと感謝です。
本当に本当にどうもありがとうございました。
後は...埋葬したいと思います。
不法投棄ではなく土葬でいきたいと思います。
その時は一人でひっそりと行いますので大丈夫です。
スクリュー キャッチ付きスクリュー ドライバー萌えました。
by えりこ (2009-07-21 22:47)
あ!!
せっかく、名前は伏せておいたのに(笑)
うまく直せなくて、非常に悔いが残る1台になりました。
アプローチが悪いのだと思うけど。
・・・だから、土葬はやめなさいって(笑)
by 馬子 (2009-07-21 23:06)
それから...
このブログ本当に大好きです。
馬子さんの手にかかると
全てのものが
何でも無いはずのものが
全て意味のあるものになる...
これからも楽しみにしています。
by えりこ (2009-07-21 23:14)
スクリュー キャッチ付きスクリュー ドライバー。
工具がマニアック過ぎますw
私もこういう工具は使った事ないですね~
分解する時は矢印探すようにします (^o^)
by Ten (2009-07-21 23:25)
えりこさん、そんなこと言われたら、
背中がかゆくるなるじゃないですか?
物事すべて、こだわるとキリがない、先へ進めなくなるという
悪しき見本ではないかと・・・。
by 馬子 (2009-07-21 23:53)
Tenさん、こんばんは。
「工具の人柱」でしたら、いつでも買って出る用意があります。
スクリュー キャッチ付きスクリュー ドライバーは、
こういう場合に使わないと、「所有していることを忘れてしまいそう」
なので・・・。
by 馬子 (2009-07-22 00:00)
パワーオン・メッセージは「How Are You Doing!」のほうがしっくりしますかねぇ。
ソニーはかなり昔からメカトロがダメダメの傾向が強いと感じます。そのくせやたらとコンパクトに造りたがって、アクロバティングな実装が多いメーカだと感じます。
電気科出身者ですが、ソニー製品の修理は電気の知識よりメカトロの知識の必要性を感じます。
by kanchi (2009-07-22 19:37)
kanchiさん、おっしゃる通りで。
他社のCDデッキの内部を拝んだことはないのですが、
コンパクトな筐体に中身を詰め込む設計には驚きました。
生産ラインで組み立てるにも、相当のスキルが必要ですね、これは。
by 馬子 (2009-07-22 20:20)
デジカメで分解写真撮りながら進めるっていうのは,車でも家電でも結構役に立ちますよね^^
ところで,CDドライブの物理的な不調ということでしたら,ドライブユニットだけ入れ替えるってのもありかと思うんですが,いかがでしょう?
あ,もう土葬されちゃったのかな〜?^^;
by daik@tokyo (2009-07-25 15:36)
daikさん、「ヤフオクで同じ形式のデッキを手に入れて部品を移植し、
本件をなかったことにする」というのも選択肢にありましたが、
オーナーがそこまでしなくていいそうです。
by 馬子 (2009-07-25 15:54)